映像作家・村岡由梨のブログ http://www.yuri-paradox.ecweb.jp/

乖離

もし私が、「私は空を飛べる」って言ったら、どうする?

 

私はあの感触を知っている。

空を飛ぶ時のあの感触を。

 

姉はあからさまな嫌悪の表情を浮かべ

今より若い母は、まるで見知らぬ人だった。

 

もう、ここにはいられない、と

デッキブラシと、細かくたたいた肉の塊を持って

裏手に閉じ込めてあった犬を解き放つ。

犬は嬉しさに跳ね回って転げ回って、肉を頬張り、走り去った。

 

もうここへは戻れない。

遠くでぐるぐる回る赤いサイレンに焦りながら

精神病院に入れられたら、もう二度と外へは出られないことを知っているから

早く飛ばなきゃ。ついさっきまで飛んでいたのに。飛べるのに

 

夫も娘も猫も出てこないのに、現実から地続きの夢みたいなものだった。

これが何かひどく重要な夢だったのは確かで、目が覚めて、さーっと音もなく砕けていくのがものすごく私を不安にさせた。