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映像作家・村岡由梨のブログ http://www.yuri-paradox.ecweb.jp/

153318円

昨夜、

夫が二人の娘をお風呂に入れて、

私が二人を受け取って、

バスタオルで体を拭いて、

パジャマを着せて、

さあ、あとは寝るだけだ、という風になったのだけど、

上の娘が「絵を描きたい」と言い始めて、

じゃあ1枚だけだよ、と言って、

電気スタンドの代わりに置いた、撮影用ランプの灯りで、

彼女は「宝の地図」の絵を描き始めた。

私は、少し離れた場所から、

ランプの灯りに照らし出された娘の顔を、

一心不乱に色ペンで絵を描く娘の顔を

じっと

ぼんやりと

しばらく見つめて、

布団に顔を埋めて泣いていた。

泣いては見つめ、泣いては見つめの

繰り返しだった。

日中から私の心には真っ黒な闇が押し寄せていて、

その時間、私の心は絶望でいっぱいになったのだった。

私が通っていた小学校の学費がいくらか知りたくなって、

調べてみた。

初年度合計   1,196,000円

2年目以降合計 461,600円

その他 教材費等、寄付金有り

中学校以降は、さらに高くなるらしい。

自分が親になって初めて、親の大変さを思い知る。

お母さんお父さん、本当にごめんなさい。

抽象の世界から、具象の世界へ。

「子供」は、今の私にとって、究極の具象的存在だ。

教育はどうするのか。

住まいはどうするのか。

次から次へ、

抽象ではなく、具象の回答を求められる。

具象の時間は止められない。

私の心が絶望でいっぱいになっても、

私の頭がバラバラに崩れ落ちて

布団に踞って泣いていても、

子供は刻一刻と大きくなっていく。

回答期限は迫ってくる。

7分のフィルム作品を作るのに、

現像所に153318円も支払った自分を、

到底受け入れることが出来ない。

もし私が今、仮に死んだとしても、

保険会社から支払われる保険金の額は、

たったの2000万だ。

抽象の世界から、具象の世界へ。

とか、言ってる場合じゃない。

とか、言ってる場合じゃない。

とか、言ってる場合じゃない。

とか、言ってる場合じゃない。

とか、言ってる場合じゃないのか?

布団に顔を埋めて泣いている私の背中が

何だかくすぐったいと思ったら、

下の娘が、拙い手つきで、

私の背中を撫でているのだった。

つい数刻前、彼女は大きな癇癪を起こして

私を困らせていたのに。

上の娘が、描きあげた絵を私に見せてくれた。

色とりどりのペンで、

宝の地図と、私の姿と、クマの姉妹の絵が描かれていた。

具象を動かすのは、大きな抽象の力だと思う。