衝撃的な表現に出会った
今から約6時間前、私は、自分がこれまで見た中で五本の指に入るくらい衝撃的な表現をしている人に出会いました。
その方は70歳代の女性でした。
脳幹出血の後遺症のため半身麻痺の状態で、首が絶えずグラングランと大きく動き、ロレツがうまく回らず、最初は彼女が何を言っているのかよくわかりませんでした。
でも意識は非常にはっきりとしていて、私と一生懸命会話をしようと頑張って下さったので、初めましての挨拶をしてから間もなく、私は、彼女が首をグラングランさせながら何を言っているのか7割くらいははっきりと判るようになりました。
彼女が私の手を握るので、「手が冷たくてごめんなさいね、外がとっても寒かったんです」と言うと、彼女は無言で私の手をずっとさすっていました。
その方の居室の隣が小さな応接スペースになっていて、そこに曼荼羅の絵がいっぱい飾られていました。仕事の上で「宗教」はデリケートな話題なので、私はあえてそれらに触れずにいたのですが、同行指導して下さったうちのスタッフのIさんに、「この絵は全部○○さん(=上記の女性)が描いたんですよ」と言われ、あまりの衝撃に言葉を失ってしまいました。
どれも、○○さんがもっと元気だった頃に描かれたものだそうで、所狭しとびっしり飾られた曼荼羅の絵を改めて1枚1枚見ていくと、とても精密に描かれていることがわかりました。○○さんは「60歳を過ぎてから描き始めた」と言っていました。岩絵具の色がまた独特で、この世のものとは思えないような青や、胸が痛くなるような赤など、とにかくあまりにも圧倒的で、全く言葉が出ませんでした。
○○さんのベッドの横のカーテンをめくると、そこにも大きな如来像が描かれた絵があって(処女作?らしいです)、作品から余りにも強い念のようなものを感じ、私は、そこの前から動けなくなりました。
圧巻が、寝室入口に立てかけてあった描きかけの絵でした。その描きかけの絵には、白くて大きな布が被せてあり、○○さんがこういう状態になってしまって絵を描けなくなった今、○○さんの恋人が引き継いでその絵を描いているとのことでした。私が「見たいです」というと、○○さんが「いいですよ」と頷いたので、Iさんが白い布を取って絵を見せてくれました。
○○さんと○○さんの恋人が描いている、その完成途中の曼荼羅の絵を見て、私の両眼から涙がぼろぼろこぼれました。○○さんの手を握って「ありがとうございます」と言うので、やっとでした。
ここ最近、私の中で確かなことがあってね。
一番大切なのは、心だと思うのです。
本当に、つくづくそう思うのです。
「一番大切なのは、心だね、ののほさん」と野々歩さんにしつこいくらい言っています。
人が誰かの作品を見て心を打たれるのは、その作者の心そのものに、だと思うのです。
以上です。
本当に、筆舌に尽くし難い体験でした。